2024-01-01から1年間の記事一覧
楽園の花は枯れない 枯れない花とは何だろう 土を経ず芽を経ず蕾を経ず いつまでもそこに咲いている 楽園の音楽は止まない 止まない音楽とは何だろう 前奏もなければ後奏もない いつまでもそこで鳴っている 楽園の人は死なない 死なない人とは何だろう 誕生…
こんにちは 心の引っ越しがしたいと聞いて ええそうです お金は十分ありますから 引っ越し先はお決まりで? ええ決まっています 自殺した隣町の少年です 少年ですか おいくつですか? 十六です 誕生日だったそうで かなしいですねー かなしいでしょう? さあ…
涙売ります この涙は かけっこで負けたときの涙です ぼくは運動会が嫌いだったのに 悔しくって泣いてしまいました この涙は はたちの誕生日に流した涙です まだまだ先は長いのに 終わりを想って泣いてしまいました この涙は 娘が生まれたときの涙です 自分は…
2024年を振り返る。永い時間が経っても正しく思い出せるように、いつも詩を書くときと同じくらいの時間で適当に書いた。まあ雑な日記。雑に書いたせいで何度か同じこと(多分大切なこと)を何度か言っているし、その上長くなっちゃったので仮に読む人が…
「もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか?」 高校生の俺はその格言を野心で解釈した しかしよくよく考えてみると そこそこ長く生きてみると 人生最後の日にやりたいことは人生のどこかでやれたこと …
傍に在る死にかけのハムスターを念頭に 哲学的な遺書を書いていた ――純粋性について 純粋なるもの それは一切の不純なものを含まないものの総称である このときの不純とは俗的なものの全部であり 俗的なものとは成年的なものの全部である 純粋とは概念である…
ついに宇多田ヒカルのライブ「HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024」の7月25日木曜日のさいたまスーパーアリーナ会場に行ってきた。これはその感想と、感想ついでの雑感に自分語り。 ライブだけじゃなくて当日のことをうだうだと書いているので、必要な…
お前になんて会わなきゃよかった 初めからひとりだったならずっと楽だったのに 何回もさよならするのはめんどうだし いずれくる最後のさよならがたいへんだ そもそもね 別にひとりでもちっとも寂しくなかったのに 最初から俺は多趣味だし 退屈だなんて思った…
ぼくはきみと二人、ほかの男友達、女友達とともに祭りに行った。 ぼくたちがみんなを見失うまで、そう時間はかからなかった。あるのはたくさんの屋台と人だかり。八人でずっと一緒にいるだなんてそりゃむりな話だ。 でも、みんなとはぐれてしまったけれど、…
久しぶりに再会した旧友と禁書庫にある資料を探しに行くまでの話。 「『仮面の告白』はやっぱり重要だよねえ。今なんてももう五回目読んじゃってるよ。」 (そんなことをしてるから鬱になるんじゃないのか)と言いたくなったのをぐっと堪え、「仮面の告白ね…
<一> 高校二年生の初めに文系に転じて八年が経った。これは、小中学生で理系を自負していた九年間と時間的に同等であり一つの節目といえる。そして、来年には学問に耽溺することができなくなることもあって、文転についての今の感懐をここで語りたくなった…
自分というキャラクターをその背後から操作しているような感覚。離人症はしばしばそのように説明される。 しかし自分の場合、離人症と自認しているその現象の感覚はそれと少し違う。 自分にとって、離人症の感覚は、ほとんどその具体的内容を忘れてしまって…
たくさんの人が死んだ そのたくさんの人より大切な人が一人死んだ すべてが沈んだ海のうえ 少女の身体は痛かった 心にきりりと棘が刺す すべてが沈んだ海のうえ 少女は静かに舟を漕ぐ ぼちゃんぼちゃんぼちゃりぼちゃん 哀しく浮かんだ命は軽い すべてが沈ん…
「ハイタカ、もしも東海域に来るようなことがあったら、おれんとこに必ず寄ってくれ。もし用があったら、いつでも呼びによこしてくれ。おれの名を言ってな。おれの名は、エスタリオルだ。」 そのことばに、ゲドは傷あとも生々しい顔をはっとあげて、じっとカ…
くるくるくるう 気が狂う るるるるらるらり 留守番電話 るるるらるらり るるるらるらり くらりくらくら 暗いへや くらくらくらり リラックマ ららららりるら ららりるれ ららりりるるれ らりるるれ らりるりるりる くるりくる くるくるくるくるくるくるくる…
前提 何一つ不自由のない人生を送ってきた。少なくとも、広く共感を得られるような苦しみとは無縁の人生だった。衣食住に困ることはなく、家族や友人にも恵まれ、平均的な期待に応えるだけの知的能力も持っていた。 つまり、自分は特筆すべき「外的な」不条…
死ではない無があるとするならそれは ガラスのように透き通った何か 体はあっても性別がない 何者でもないが何者にでもなれる それでいて形の整った美しい一個体 例えばガラスのゴブレット 大概はワインかなにか飲み物だけれど たまに葡萄の実とか薔薇の花と…
潮騒が傍を通り過ぎた 暗い抜け道 海へと曳かれ 手のぬくもりと少しの汗に気づく たどり着いたのはうらさびしい洞穴 交わすべき言葉はもう一つもない 大好きだったから 私はなんでも受け入れた 触り触られるものだけが信用できた ことが済んで 夜は終わって …
《死を思い止まらせた障害について》 ルネは長期にわたり、死の瞬間とその後の世界について熟慮していた。当初、感情的にも論理的にも、自殺は妥当な選択肢とは思えなかった。 まず、死ぬ瞬間について。一般に、死には苦痛が伴うとされる。後にも注釈するが…
川の向こうでお前は泣いていた 小さく座ってうつむいて ときどき足元の小石を投げ入れたりして またときどきメダカやあめんぼに目を奪われたりして 誰にも気づかれないようなため息をついていた 川の向こうのお前は美しかった 投げ入れた小石が跳ねて跳ねて…
鱧の皮切れど切れども水びたし ニライカナイ沸く夕立にほえさけぶ 金時計夏とともだち呼びにけり 朝ねぼう壁のむこうで蝉が鳴く 夏瓜や種よあしたへ飛んでいけ 夕焼けが日傘をよけて忍び込む 夏潮に急かされ今日も靴一つ 逆夢がさっと午睡を駆け抜けた 宵涼…
ともに寝そべっていたひろいひろい砂漠 右手を伸ばしても届かない そのすき間から砂がこぼれた ていねいな鼻歌が聞こえてくる おい、行くぞ 少年は泣いていた さっきの夢を思い出しながら 必要な会話を少しだけした 果てしない長さを歩いた 夜といっしょに冷…
Q. 衣食住にも恵まれ、家族にも友達にも恋人にも愛されているのに、それに能力もあるのに、なぜ苦しいの A. あなたの状況を考えると、能力もあり、物質的な充足もあり、愛されているにもかかわらず苦しいと感じるのは、いくつかの深層的な理由が考えられます…
死に場所はすぐに決まった 見えた川がきれいだったただそれだけである 川辺でもぐらが死んでいる いのちの匂いは何も無い 変わらない冬の匂いだけが 満ちている ずっとずっといつまでも 無意識にまさぐった左のポケットで小さなノートに当たった 1ページ目…
犬が死にました 君が死んだのは、生まれ変わって、おしゃべりしたかったからでしょう ぼくは日本語しか使えなかったから 死に意味はあるのでしょう 友達が死にました 君が死んだのは、生まれ変わって、きれいな姿を見せるためでしょう ぼくは潔癖症だったか…
俺の代わりに死んでくれ 俺の代わりに死んでくれ 俺は生きたい 俺は生きたい 早く出発しよう 秋なんて忘れさって 白い吐息とともに森をぬけ ついにはマフラーも捨ててしまったら 命あふれる丘の向こうで 光いっぱいの滝を見るのだ そう言われたから 死ぬこと…